ミューズの箱舟2007
2007年12月2日に行われましたミューズの箱舟2007年の自作スピーカーコンテストに行ってきました。ミューズの箱舟のイベントに参加するのは初めてで出不精の私にとっては行くのにちょっと勇気がいたが今まで行かなかったのがもったいないくらい素晴しいイベントでした。もっとこじんまりしたイベントかと思っていたのですが、席はほぼ満席。スタッフも含めると200人ぐらいかな?
会場に着くとこのような分厚いパンフレットを無料で渡していただいた。右側が1000円で購入した冊子。過去のミューズの活動ものっていたので真っ先に購入。今年のテーマは公称12センチ一発。全部で10人の方がエントリーされました。1人10分程度の持ち時間にスピーカーの簡単な解説、課題曲、自由曲をかけて最後に観客の投票で各分門(音質、ルックス、アイデア、総合)のトップを決めるというもの。
海老沢正さんの作品。Wood-1。アイデア賞とルックス賞を受賞された。FE126Eを音道1m程度のショートホーン。ホーンを3分割して正面のポートからでるようになっていて大変こっている作りでした。解説で低域はあまり欲張っていないとのことで実際他の作品に比べるとあまり低域の伸びは感じなかったが、そこはご本人の狙い通りなのだろう。パインの集製材とラッカー塗装によるエンクロージャーが大変美しく、材の響きを加わって「しっとりした」私の好きな音だった。
神村文男さんの作品。マンモスセカンド。FE126Eにサブコーンをとりつけてドライブされていた。今回出品されていた方々はほとんどがFE126Eを利用されての出品であったが、神村さんの126Eはサブコーンがあったせいか中高域のキャラクターが他の126Eに比べ全然違っていた。音はバックロードホーンで非常に能率が高く、音圧レベルに関しては後の天野さんの作品と同等くらいに感じた。
杉原純さんの作品。Z4321。日産のフェアレディーZにかけて命名されたとのこと。FE126E利用によるツインバスレフ。通常のバスレフとはだいぶ違う音質で、低域のかなり低い部分まで伸びているという印象をもちました。これはバフルの大きさと、ダブルバスレフによるものと思いました。
田中博志さんの作品。小吉。唯一FX120を利用されての出品。小口径バッフルを生かした音の定位感、まとまり感はぴか一で音像が小さくくっきり浮かび上がってくる感じでした。FXシリーズのユニットは一度も聞いたことがなかったのだが、FFシリーズのようなアルミドームの高域のしゃらしゃら感は全く感じませんでした。(しかしこれは会場の広さと私の座っている席が後ろのほうだったのが原因かもしれません)
香川哲哉さんの作品。FN-5PST STADY。FE126Eにネットワーク回路を利用。スルーで使うFE126Eとまた一味違う音で大変バランスよくまとまっており、上品な鳴りかたをするスピーカーでした。
竹中正明様の作品。ダブルブースターAG180DB。竹中様は自作3Dスパイラルホーンでも有名なのでご存知の方も多いだろう。こちらは角型のスパイラルホーンにFE127Eを搭載したスピーカー。角型スパイラルの最後の出口部分はバスレフポートになっています。音はバックロードにありがちなパイプ音が皆無ですごく聞きやすく、定位感もよかった。
今岡一夫さんの作品。DR-19。竹中さんのプレートがのっていますが今岡さんの作です。FE126Eを利用してのバックロードホーンスピーカー。音道長2.0m、空気室2.5Lとのこと。長岡先生のバックロードに比べると若干短めの設計か。音道部分にテーパー加工や、吸音材でパイプ共鳴音を少なくする工夫をされている。音も素直で癖のない極めて優等生的ななり方でした。
森健一郎さんの作品。HACOextention。FF125Kを利用してのフロントロードホーン型のスピーカー。中高域をホーンで、下をバスレフポートで音域を稼ぐ方式。FEシリーズとは全く違った音を持つFFシリーズであるが、これだけ会場が広いと自分が知っているFF125Kとは全く違って感じた(森さんのフロントロードによる影響もあるかもしれないが、、、)森さんはスピーカーよりか最初のスピーカー紹介のトークがおもしろくてそっちに印象が残りました。
音質賞を受賞された天野武宏さんの作品。SUT-120。天野さんはご自身のサイトAmano's超究極のバックローホーンを主催されている有名な方。天野さんのSUT120は写真でみるよりかかなり大きく箱が3分割になっていて、複数の人が時間をかけてセッティングをされていた。スピーカーユニットはFE126E。音道の長さは275センチと長岡バックロードの標準値といったところ。この作品は長岡先生のD-100を参考に作られたとのことでした。音は期待どおり素晴しく、バックロードの傑作という感じでした。ダイナミックレンジが広く、それでいて音像が小さく、音が前へ前へ出てくる。バックロードにありがちなパイプ音は全く感じられない。初めてスワンスピーカーを聞いたときのような感動でした。天野さんとはその後いろいろスピーカー製作やコンテストにかんしてお話を伺うことができ勉強になりました。いろいろありがとうございます。
最後の作品はミューズの箱舟会長前田好一さんの作品。チューバソルデス。こちらの作品は総合賞を受賞されました。天野さんと音質賞で同点だったのですが、挙手による決戦で天野さんに音質賞はゆずりました。FE126E搭載、直管形式のバックロードホーンです。音道内部にフォックシートを利用されているとの説明。音は大変作りこまれているのが分かる繊細な音作りで、前作の天野さんの作品とは方向性が違い(逆の方向性といえるのかな?)ましたが、この2つの作品が音質賞で同位であったのは納得いくものでした。内部の音道は3つの長い直管で構成されホーンの開口部は底面になっている構造。このような構造でスピーカーを作ったら、パイプ音だらけで扱いに困ると思うのだが、このスピーカーは一切パイプ共鳴音を感じず低域を延ばすことに成功されていました。
最後に;この会に参加して、ネットで知り合うことのできたハイエンド自作スピーカーのkenbeさん、手作りスピーカー研究会の小玉さん、Amano's超究極のバックローホーンの天野さん、variousクラフトさんなどとはじめてお会いすることができいろいろお話を聞くことができました。今後の自分のスピーカー作りに大いにプラスになりました。このような素晴しいイベントを毎年ボランティアで開催されている会長及びメンバーの皆様には本当に感謝!この場をかりてお礼を申し上げます。