音響菅型スピーカー(用語集)
音響菅型スピーカーはパイプ自体に発生する共振を利用して低域を増強するスピーカーです。このスピーカーの最大の特徴はまさに楽器の原理、定在波を利用して音を出すスピーカーであるという点です。
スピーカーエンクロージャーは内部で発生する定在波を嫌い(定在波がユニットに悪さをするから)箱の内部に平行面を作らないようにしたり、吸音材を貼ったりいろいろ工夫するがこの音響菅型スピーカーは逆にその「定在波」を利用したスピーカーであるということです。
共鳴管のいろいろ
音響菅は①両端のとじた閉菅②両端の開いた両開菅③片端のみ開いた片閉菅の3種類が考えられるが、②と③のみがスピーカーに利用できることができる。(①は部屋を大きな管と考えると、部屋の定在波はこの方式が適用できる)
②の両端の開いた両開菅の有名なスピーカーはボーズのアコースティックウエーブガイド。
③は最も利用用途が高い共鳴菅方式で長岡氏設計の共鳴管もほとんどがこの方式によるもの。この方式で開口に向かって少しずつ管が広がってゆく方式を特にTQWT方式と呼んだりする。
共鳴する周波数
①の閉菅は共鳴周波数を取り出す方式としてのエンクロージャーには使えない。部屋で発生する定在波と同じ。パイプの長さをLとすると2Lで共振する。例えばLが5mだとすると、10mの波長は
34hz(340/10)。34hzを基準としてその2倍、4倍、6倍・・・と整数倍で共振します。
②③の共振周波数は4Lになる。例えば菅の長さが1mだとすると、4mの波長は85hz(340/4)。以下その3倍、5倍、7倍・・と奇数倍で共振します。
長岡鉄男氏のネッシーF3000
長岡鉄男氏の最後のリファレンススピーカーF3000ネッシーⅢもまさにこの音響菅型のスピーカーだ。このタイプのスピーカーは楽器とまさに同じ原理を利用したスピーカーだけに、かなり好みがはっきりするところ。
音は低域はバックロードやバスレフのようにフラットを狙うのは難しくどうしても特性にしゃくれがでてしまう。は基本派の3倍、5倍、7倍と奇数にピークが現れ、例えば60hzを基本波とすると、180hz、300hz、420hz・・・となる。そう考えると低域は60hzにのに山がありあとはだらさがりに落ちてしまう。長岡氏のネッシーはこのしゃくれの部分をサブウーファーで補っていた。
共鳴管方式のスピーカーは、パイプ共振の周波数においては背圧がかかるがそれ以外は一切背圧がかからないのでユニットの反応は良い。デメリットとしては癖が強く、ひどい設計の場合バックロードホーン以上に低域がボーボーなるように感じられるものもある。