実験1.1~1.16のデータまとめ
ここまでで分かったこと
以上実験1.1~1.21が完了した。
始めにこの実験の目的で書いた「実験で確かめたいこと」
①空気室の役割について
②スロートの役割について
③fxを動かすことができるか
について分かったことを書いていこう。
まずは測定したデータの最大音圧レベルを一覧表にまとめました。
左右空気室 上下スロート断面積 ()はスロート絞り率 |
2.58L | 2.92L | 3.19L | 3.45L | 3.7L | 3.96L | 4.21L | 4.47L | 4.73L |
5.6cm2(0.06) | 78.6 | 78.7 | 78.8 | 78.7 | 78.5 | 78.4 | 78.6 | 78.9 | 78.4 |
23cm2(0.28) | 78.8 | 79.5 | 79.0 | 79.6 | 78.8 | 79.1 | 79.0 | 78.8 | 79.1 |
40.4cm2(0.49) | 80.0 | 80.1 | 80.4 | 79.8 | 79.7 | 79.7 | 79.6 | 79.8 | 79.6 |
57.5cm2(0.7) | 79.6 | 80.3 | 80.7 | 80.3 | 79.9 | 80.0 | 80.3 | 80.0 | 80.1 |
75.2cm2(0.91) | 80.0 | 80.6 | 80.8 | 80.4 | 80.0 | 80.6 | 80.1 | 80.1 | 80.0 |
92.6cm2(1.12) | 80.1 | 80.9 | 80.8 | 80.6 | 80.5 | 80.1 | 80.5 | 80.7 | 80.9 |
110cm2(1.34) | 79.6 | 80.7 | 81.2 | 80.9 | 80.3 | 80.7 | 80.3 | 80.1 | 80.7 |
スペアアにでてくる全帯域の音圧レベル(db)です。これは1秒の平均値でとっていて、けっこう動くので参考程度にしかならないが、このように表にしてみると大まかな傾向としてはかなりはっきりしたものが見て取れることができる。
これは発見した非常に重要なことがだが、
「音圧レベル」という単純な指標で見る限りスロート断面積の大小は音圧レベルに大きな相関関係があるが、空気室は相関関係がほとんど見られない」
どういうことか説明しよう。表を縦方向に見てください(空気室一定、スロート可変)。どこでも同じなのだが、3.19Lを例にとると、スロート断面積が小さいほうから順に78.8db⇒79.0⇒80.4⇒80.7⇒80.8⇒80.8⇒81.2と数値が大きくなっていっている。これはスロートが大きくなるにしたがって音圧が順々に大きくなるのを示している。これはどの空気室の大きさでも同様のことが観察できる。
しかし今度は横方向に注目してください(スロート一定空気室可変)。たとえばスロート断面積23cm2(0.28)を例にとると78.8、79.5、79.6、78.8、79.1、79、78.8、79.1と何の関連もない数値になってしまう。これはどのスロート断面積でも同じであった。(↓のグラフから見ると空気室3.19Lのあたりが若干音圧が高いのを確認できるかという程度)
以上のことは表にしてみると分かりやすいと思うので添付します。
スロートが大きくなるにしたがって音圧増大
空気室の大小には音圧レベルは相関が得られない
つまりスロート断面積はどの空気室容積のときでも、断面積が大きくなればなるほど音圧が上昇している。しかし今回の測定データを見るとスロート断面積110cm2(絞り率1.34)が最も音圧が高いが、これはスロートを無限に大きくしていったら音圧も無限に大きくなるとは当然考えられずどこかでホーンロードがかからない点がでてくるはずである。もう少し、スロートを大きく取れる設計にしないとそのへんは答えがでてこない。(この実験の反省点である)
空気室がローパスフィルタとして働くかどうかは前のページで行ったホーン内部のスペアナ観測 (中高域の漏れの確認)の結果をしたにまとめたがほとんど結果らしい結果が得られなかった。
前のページで各帯域の音圧レベルを↓の表のようにまとめたが、
20hz= | 76.5db | 125hz | 93.2db | 800hz | 69.3db | 5khz | 48.5db |
25hz | 80.8db | 160hz | 93.6db | 1kzh | 63.9db | 6.3khz | 43.5db |
31.5hz | 83.3db | 200hz | 89.5db | 1.25kzh | 60.5db | 8khz | 48.6db |
40hz | 85.6db | 250hz | 85.6db | 1.6khz | 54.5db | 10khz | 52.3db |
50hz | 89.1db | 315hz | 80.2db | 2khz | 56.4db | 12.5khz | 46.7db |
63hz | 88.5db | 400hz | 77.6db | 2.5khz | 57.1db | 16khz | 39.7db |
80hz | 94.5db | 500hz | 72.4db | 3.15khz | 54.2db | 20khz | 44.3db |
100hz | 92.3db | 630hz | 67.2db | 4khz | 55.4db | ||
低域 |
中低域 |
中高域 |
高域 |
この表は縦に4つに区切ると大雑把に低域、中低域、中高域、高域と分けることができよう。前ページではスロートを一定にして空気室を9段階に小さくしていったが、このページではその9段階の平均値をだしてみよう。
低域 | 中低域 | 中高域 | 高域 | |
①空気室4.73L | 86.32 | 82.41 | 58.91 | 46.22 |
②空気室4.47L | 85.42 | 82.08 | 58.15 | 46.22 |
③空気室4.21L | 86.37 | 82.18 | 58.36 | 45.74 |
④空気室3.96L | 84.96 | 81.83 | 58.53 | 46.72 |
⑤空気室3.7L | 85.8 | 83.02 | 58.37 | 45.74 |
⑥空気室3.45L | 85.53 | 81.75 | 58.75 | 46.32 |
⑦空気室3.19L | 85.67 | 83.8 | 59.1 | 46.18 |
⑧空気室2.92L | 86.1 | 83.91 | 58.8 | 45.8 |
⑨空気室2.58L | 86.72 | 83.96 | 58.9 | 45.8 |
数値の単位はdbです。
空気室が小さいほうが中高域や高域が漏れるわけであるから、音圧が高くでなければならないはずだが、全く相関のない表になってしまった。つまりピンクノイズからの測定では中高域の漏れを観測できなかった。聴感上確認できるかは実験3で確認しよう。
最後に③のfxを動かすことができるかどうか。
長岡鉄男先生はという式をだしている。ここでいうVaとは空気室のことで、S0とはスロート断面積のことである。この単純な式から次のことが導き出せる。
fxを上げたければ空気室を小さくするか、スロートを大きくする。
fxを下げたければ空気室を大きくするか、スロートを小さくする。
これは今までやった1.1~1.20のスペアナ分布を見て判断するしかない。全部確認してみるがイマイチ。fxが動いているというのを明確に示すのはスペアナ上はわからなかった。これも聴感上確認できるかを次の実験で確認しよう。