6、ソースによる比較
オーケストラ1
べートーベン
交響曲第4番
オーケストラをソースとして聴く場合、楽器それぞれのパートの分解能やfレンジをを求めた聴き方をするか、全体の音場感の広さ・臨場感を聴き方するかの2つに分けると、スワン系スピーカーは後者は得意・前者は苦手な気がする。スワン、フラミンゴとも小口径フルレンジ単発のバックロードホーン型のスピーカーで、中域をベースとしホーンで低域をかせぐ方式を採用しているの一般的なマルチウエイに比べれば当然低域レンジは狭い。
フィンランドバーチバージョンで聴くと胴体部分からの豊かな響きが加わり、MDFバージョンのものより音場感を広く感じる。全体的な音場感という意味では、起伏の激しい第3楽章においてはその傾向はより顕著に感じることができる。個々のパーツで見ると第2楽章の息の長いクラリネット部分や最終楽章のファゴットなどの木管楽器はバーチ合板のものがなんともいえない味をだしてくれる。
音の艶や広い音場感の創出といった意味ではフィンランドバーチ圧勝。楽器個々の分解能はバーチ・MDFともにそれほど変化はないが、ピアノ・コントラバスなどの低域の抜けはバーチが上なのが分かる。
オーケストラ2
チャイコフスキー
バイオリン協奏曲第3楽章
第3楽章のヴァイオリンの独奏部分において聴き比べを集中的に行った。バイオリンは高域の楽器であるという印象を受けるが、下はけっこう低いところ(200hz)から、3000hzあたりまでを基本波としてもち高調波成分は200~10000hzあたりまでとブラス系などと比較するとけっこう守備範囲の広い楽器であることが分かる。
そのためかかなり高域にさしかかるとバーチもMDFもそれほど違いが感じられなくなるが、バイオリンの胴鳴りの激しいする中低域部分においてはバーチ圧勝、本物かと耳を疑りたくなるほど。バイオリンの主要材料はスプルースであると言われるが、どうしてどうしてそれが材質的に全く関連性のないバーチで同様の響きをだすのだろううか?これは実際のバイオリンの響きではなくそう錯覚してるだけなのか?
曲全体から見たスピーカー評を言うと、若干低域レンジの不足があるものの、臨場感・定位間・音離れの良さそれを完全に補ってくれている。
室内管弦楽
モーツアルト
弦楽4重奏曲第17番狩り
ハイドンの弦楽4重奏に影響を受けかかれたといわれるモーツアルトの「ハイドンセット」。基本構成はバイオリン2・チェロ1・コントラバス1での狭い室内での楽曲。
これは現在実験に使っているスピーカーに限ったことではないが音場再生という意味においては最も再生しやすいソースがこのジャンルの音楽。というのは基本的に広い音場で録音されたものには広い音場で再生し、狭い音場で録音されたもには狭い音場で再生するとよいからだ。
レンジがそれほど広くないソースのため、10センチフルレンジによるバックロードでは最強の威力を発揮できるといえる。一度フィンランドバーチバージョンD-88を聴いたら、これ以外のスピーカーで聞く気が全く起きなくなる。D-101sスーパースワン(FE108S搭載)との比較においては、低域の量感のみスーパースワン勝るが、トータルバランスではD-88スーパーフラミンゴが勝る(このソースに関して)。
ジャズ
ハンク・モブリー
リカード・ボサ・ノヴァ
CDのハンクモブリーはイーストマン出身のジャズのテナーサックス奏者でコンポーザー。大変有名な一枚なのでジャケットを見ただけで分かる方も多いと思う。
ジャズ圧倒的なピアノ・ドラムの低域を重視した再生方法(特にJBL系のスピーカーのファンに多い)とはかなり違う音作りをしているのがこのD-88スーパーフラミンゴ。基本的に大口径ウーファーを並列で並べると量感と迫力は増すが、スピード感・音離れ感は悪くなる(長岡先生はこれをネクラサウンドと呼んだ)。一方スーパーフラミンゴは低域の量感よりかスピード感、音離れの良さを特徴としている。大口径が”重厚”サウンド、小口径フルレンジが”軽快”サウンドと言えばよいのだろうか。
トランペットやテナーサックスといった金管楽器の響きもバーチは味があるが、、最も違いを認識できるのはピアノやドラムの低音部分。立下り特性が良く、ぼやけず、音像もくっきりする(これは豊かな響きとは逆で、バーチの制振効果だろう)。
ロック
ビートルズパストマスターズvol1
すべて有名ソース路線できたのでそのまま突っ走ることにしよう(笑)クラシックとジャズを書き終えて、それ以外のジャンル分けに苦しんだが、ロックとは何?ポップスとは何?ヘビーメタルとは何?というのは筆者にはよく分からない。音楽のジャンルは専門家に言わせると数百になるそうだが、私個人の好みで言ってしまえば、①クラシック②ジャズ③その他にしたいくらいなのだ。ここでいうロックとは私的ないい加減な解釈で、ボーカル・ベース・ギター・ドラムの4つで構成され現代ポップミュージックを含むような概念としよう。
前置きが長くなったが、実際の比較視聴結果。全体的に言うと、バーチのが良いのだが、この良さの比はクラシックの時ほど大きくないといったところか。ドラムの歯切れが良いのはジャズの項で書いたとおり。ボーカル部分については以下でくわしく書くが、シャープさが減って、若干ふっくらした傾向になる気がする。
男ボーカル
石原裕次郎
わが人生に悔いなし
ロックとボーカルをどこで分けたかというと、聞き方で曲全体のリズムを重視するか、人声を重視するかという点でわけている。
ボーカル帯域はスワン系スピーカーは最も威力を発揮するスピーカーのひとつだ。何故なら、それほどレンジを拡大する必要がない・定位感が良いスピーカーで聞くとより実際に近い音に聞こえる(人は楽器よりか、人の声についての定位に敏感だから)・音のつながりが良い(シングルコーンだから)などなど。
バーチ・MDFの比較。バーチで聴く人声は若干ふっくら系になり、聴き疲れのしない音になった。これはドラム・ピアノの音がシャープになるのと全く逆の方向。一方MDFは響きの少ない市販スピーカー的な音になった。評価は好き嫌いによって分かれるのではないかと思う。大山は言うまでもなくバーチ派だが・・・
女ボーカール
松任谷由美
水の影
ユーミンこと松任谷由美の隠れた名作アルバム。
非常に高域まで延びているユーミンの歌声は10センチよりか8センチフルレンジユニットのほうが適しているというのが私の感想だ。実際10センチフルレンジのスーパースワンは、FE-108SUPERが右肩上がりのf特のためかなり高域まででているので、一聴するとスーパースワンとそれほど大きな違いを受けないようにかんじるかもしれないが、”質”はかなり違う。88ESの方が指向特性が優れているからだろうが、高域の音の広がりが豊かに感じる。
バーチとMDFの比較はほぼ男性ボーカルのときとほぼ同じ結果。バーチエンクロージャーの豊かな響きがマイナスに働かず、良いスパイスとなっている。これがもし、振動版の重く、動きの鈍いユニットであれば逆にMDFやパーチクルボードが適しているのかもしれない。