3、初視聴時の両スピーカーのインプレ
MDFバージョンのスピーカーが完成したのが4月8日ごろでそれから約1ヵ月後の5月2日にフィンランドバーチバージョンが完成した。
MDFバージョンの視聴レポートは長岡鉄男スピーカー視聴編D-88に詳しく書いているのでそちらを見ていただきたい。非常に優秀なスピーカーで鳴らしはじめから全くエージングを要しないかのようなスピーカーであるという書き方をたしかしたと思う。
フィンランドバーチバージョンに関してはまだ何も書いていなかったのでここで簡単に書いておこう。初視聴の感想はまず「箱鳴りがMDFより多いな」と感じた。これはバーチ特有の反りを端がねやクランプを使ってかなり強固に接合したことが理由として考えられる。10日ぐらいしてこのパイプ共鳴を含んだような箱鳴りはだいぶへってきてバーチ特有の美しい樹の響きをだすようになってきた。これは、箱からボンドの水分の乾燥が急激に進んだことが原因と考えられる。特にピアノ、パーカッション、低域のストリングス系、ブラス系などで音の解像度が著しく向上した。この10日間はユニットおよび箱のエージングが大幅に進んだのだが、これはMDFバージョンでは見られない現象であった。
期間的にこのあたりでだいたいMDFバージョンのスピーカーとユニットを鳴らした総時間が均衡してきたが、音質的特に音場間の広さや、音の艶・あでやかさにおいてフィンランドバーチバージョンがMDFを完全に上回っているのを感じた。そして現在はバーチバージョンが完成してちょうど2週間ほどだが急激なエージングは和らいできた感があるフィンランドバーチに関してはこれから半年感ぐらいはゆっくりしたペースで箱のエージングが進むであろうと予測する。
MDFバージョンが完成した際に88ESのエージングはそれほど感じられないというような書き方をしたが、これは大きな間違いであった。視聴3週間目くらいにはいるMDFバージョンと、発視聴のフィンランドバーチを比較すると(つまり新品のユニットと視聴3週間目のユニットを比較すると)俄然音が違っているのに驚いた。しかしこの初期のエージングは結構早く進むので10日目にはもうどちらのユニットもそれほど変化のないところまできたように感じる。