1、実験の目的
実験の目的は”エンクロージャーの材”を変化させるとスピーカーシステム全体にどのような影響が出るのかを調べるのが目的である。
どのようにすればエンクロージャーの響きの違いをしることができるのだろうかと考えた結果、次のような条件を満たせばスピーカーエンクロージャーの違いを視聴比較できるのではないかと考えた。
- 全く同一のエンクロージャーを材のみ変えて2組(計4個)作る。
- 全く同一のユニット・同一の利用条件のユニットを2組(計4個)使う。
- 組み立て方(木工ボンド、ビス、吸音材、、吸音材)を統一する。
- 材の響きがわかりやすくするため、表面積ができるだけ大きいものが良い。
- 同一パーツ間による品質の誤差ををなくすため、フルレンジ1発のスピーカー。ネットワークは利用しない。
- 極力差異を目立たせるであろう材の比較が良い。
- テストにはもちろん全て同一のシステムで測定を行う
以上のような条件を満たすスピーカーを作り、すべてエンクロージャーの材以外は同一条件にする。これで音が変化しているとすればそれはほぼ純粋に「エンクロージャーの響き」によるものと考えることができるとする。私が実験に選んだスピーカーは大山が選んだ超人気長岡スピーカーの1つD-88スーパーフラミンゴ。
1~7までの条件にうまく合致したからであるが、簡単に補足説明をしてみよう。「1」「3」は手間はかかるが簡単。同じエンクロージャーを同じ工法で2つ作るだけである。「2」の条件は限定ユニットのFE-88ESが4本入手できたことでクリヤー、フルレンジ1発のバックロードであり「4」と「5」の条件をクリヤー。そして条件「6」極力差異を目立たせる材の比較が良い。これにはMDF材とフィンランドバーチ材を使うことにした。理由はフィンランドバーチ合板が自作派の間で最上の合板として扱われている反面、MDFに対しての評価があまり好ましくないから。これであれば差異がはっきりでるだろうと考えた。私は自分で確認してみないと気の済まない性分で皆が「バーチがいい」「アピトンがいい」と言われて自分で実験して確かめるまではどうも納得がいかないのだ。
今回条件を整えるだけ整えたがどうしても同一にできなかったものが1点ある。そしてそれは後々考えると大きなミスを犯してしまったことに気づいた。それはMDFとフィンランドバーチバージョンが別々に作ったので、出来上がりに約1ヶ月程度時間的な誤差があるという点だ。つまりMDFバージョンのほうが箱・ユニットのエージングが進んでいる状態といえるわけでこのことは結構無視できない。ユニットは奏鳴らし時間を計っているのであわせることができるが、エンクロージャーだけはどうしようもない。まあそれは次回への反省ということで話を進めよう。