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2、ボックスの材質は主に”残響音”に影響する
スピーカーエンクロージャーには様々な材が使われる。エンクロージャーの材を変化させれば音色は変化するが、これは何故なのだろうか?
答え:ユニットの振動が材に伝わり材も響いて音を出すから。
ではこのエンクロージャーからの響きはシステム全体で考える音のどの部分に影響を与えるのだろう?
答え:主に「残響音」に大きな影響を与える。
エンクロージャーの響きがどのようなメカニズムで”残響音”に影響を与えるか簡単に見てみよう。
- ユニットから音が放射される。(音Aとする)
- ユニットから箱に伝わった振動がワンテンポ遅れて箱を振動させ音を発する。箱からでる音圧レベルはユニットからの10分の1程度と大きくはないが数百~数千hzの非常に耳につきやすい帯域の音である。さらに大切なのは音が続く長さ。これは一概には言えないが、0.2~0.4秒の残響音として残る。この時間の長さはスピーカーの振動版の過渡減衰応答に比べると10倍以上の長さである。簡単に言うと振動版は信号が止まると音がすぐに止まるが、箱の振動はすぐには止まらずに長続きするということ。つまり残響音を構成するものはこの箱の振動、および部屋の影響がユニットの影響を凌駕する(これを音Bとする)
- 箱からの振動が今度はユニットの振動版に伝わり、振動板が正確な振動の妨げとなる(このユニットの音を妨げた成分をCとする)
こんな感じだがこれはこの世の中にあるスピーカーシステム全てに共通して必ず起こるプロセスだ。このユニットから箱に伝わった振動(音Bと音C)は音圧レベルに比例して影響を受け、完全にゼロにすることはできない。どんなエンクロージャーでも音量を上げてゆけばエンクロージャーが盛大に振動しユニットからでてくる音と混じってスピーカーの音の一部を形成することになる。
つまり何故エンクロージャーの材が残響音に影響するかといえば、エンクロージャー自体もユニットの振動につられて振動するからで、言わばエンクロージャーはユニットとは別の「もうひとつの振動板」とも考えられる。エンクロージャーの材質によって音が変化するのは、ユニットの振動板の材料によって音質が大きく変化するのと同じと考えればわかり易いのではないだろうか。このエンクロージャーの振動はユニットの振動のような音圧レベルはないが振動が長続きするため、残響音に大きく影響し、スピーカーシステム全体から見ると非常に大きなウエイトを占めるわけだ。