108万円の音をGETするメルマガ
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2008年6月28日配信号
金曜日にごみを出し忘れてしまった大山です。
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【大山の自作SP道場】FE208ES-R搭載のD58ES視聴1ヶ月
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先月はD58ESにいれたFE208ESとFE208ES-Rを比較しました。
先月書くのを忘れてしまったのですが、FE208ESは相当聞き込んだ
ユニットで、FE208ES-Rはまだ10時間ほどしか鳴らしていない
状態での比較でした。
つまりFE208ESはエージングが一段落ついているもの。一方、
FE208ES-Rはほとんどエージングが済んでいない状態のもの。
先月出した写真ですが、
http://www.diyloudspeakers.jp/idaf/data/27.html
1ヶ月間、ユニットを取り替えずに左にFE208ES-R、右にFE208ES
をアンプから同じ信号を送り込んで視聴をさらに繰り返しました。
D58ESに入れたFE208ESとFE208ES-Rの違いを確認するためと、
208ES-R用にどうすれば改良できるかを知るためです。
FE208ESはエージングが一段落ついているのでさほど音に変化は
見られませんでしたが、FE208ES-Rは非常に大きな変化が見られ
ました。
「能率が高くなった」のです。つまり音が大きくでるようになった。
先月号のメルマガで「FE208ES-RはFE208ESより能率が低く、バックロード
らしさの少ない音だ」と書きました。
ところがどっこい、FE208ES-Rの音圧がFE208ESとほぼ同じか若干低い
ぐらいにまで変化してきました。この違いはソースを変えて何度
も何度も行いましたので間違いありません。この変化はとてつも
なく大きく感じられます。
ユニットの初期のエージングでは
(1)バネが柔らかくなりF0が低下する⇒低域がよりでやすくなる
(2)高域のピーキーさが解消される
などが毎回必ず起こりますが、ユニット自体の能率が上がる
なんてのはどういうふうに説明されるのでしょうか?私には
理論的な説明はできません。分かる方教えてください。
やはりこのあたりは、騒音計とスペクトルアナライザーを使って
周波数特性を計らないと客観的なレビューにはなりませんよね。
はっきり言って自分でも納得できません。
1ヶ月経ってFE208ES-Rの音がよくなっているかといわれれば良く
なってはいます。始めは全然バックロードらしさがなかった
のが少しバックロード的な音になってきました。
それと普通にエージングをすれば起こる高域のキラキラ感
の減少です。僅かですが。(もともとFE208ES-Rのマグネシ
ウムセンターキャップははじめからさほどとげとげしていない)
しかし、箱がこのままで完全に納得がいくか
といわれれば決して満足いくレベルとも言い切れず、
もう少しホーンからの低域が欲しいと感じます。
この辺の改良は今後の課題ですね。
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【オーディオコラム】箱のエージングについて
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今回はFE208ES-Rがエージングの話がでたのでエージングについて。
『エージング』とは
機器を使い込むことによって音が変化してくること。
特に使い始めの機械類は動きが鈍く、ぎこちない。し
たがって音も立ち上がりの鈍い音がする。
しかし、通電して3,4時間するともう音が変わってくる。
特にこの一番初めのエージングが最も影響が大きい。
さらに数ヶ月(中期)、数年単位(長期)でもエージング
は確実に進み音は変化していく。ある一定の期間を経ると
今度は本当のエージング(老化)の期間に入り機器はいづ
れ故障する。これがエージングの流れ。
エージングはよく人の一生と類比される。
幼少期⇒青年期⇒壮年期⇒老年記
人間でもっともパワーの発揮する時期は青年期と壮年期
で、幼少期と老年期は成長と老化の時期。これがオーディオ
機器のエージングと見事に一致するからだろう。
エージングは考えられるありとあらゆる機器に存在する。
●スピーカーボックス
●スピーカーユニット
●スピーカーケーブル
●部屋
●アンプ
●プレーヤー
●オーディオラック
エージングの進み方というのも、機器によってだいぶ
違うが最も面白いのがスピーカーボックス。アンプ、プレーヤー
ケーブル類もエージングはあるがスピーカーほど
大きくない。
スピーカー自作で必ずでてくるのがこのボックスのエージング
の話。スピーカーユニットのエージングはほとんどに人が市販品で
経験しているからびっくりしないが、この箱のエージングは
実際に体験してみると本当に皆びっくりする。
「時間がたつと箱のぼんつきが解消される」
などと本に書いてあるが、はじめはこんなの嘘だろうと思っていた。
今では自分で経験しているから、むしろ当たり前のことなのだ
がこれはなかなか経験していない人には理解しにくいことなの
かも知れない。エージングは箱を響かす設計にすると
さらに時間と共に成熟の度合いを増してくる。
私はエージングの期間が大好き。使うほど音が良くな
ってきて愛着がさらに沸いてくる。箱のエージングの
場合はただ時間さえたてばエージングが進む。何の努力もなしに。
ただ時間だけがたてばよい。自作スピーカーが好き
なのかエージングが好きなのかもわからないぐらいエージング
が好きなのです。
この箱のエージングは何故進むのかというのは私が
木工学校に通っているときに「木材」の学習でかなり
理解が深まりましたので、以下は大山流のエンクロージャ
ーのエージング解説。
木のエージングは含水率とクリープから説明できる。
木は強引に折りまげようとすると、反発しようと
する。しかし、長期間折り曲げた状態をキープすると、変形した形
から反発を受けない状態になる。これをクリープと言う。つまり
端がねやビスを使って作って組み上げたスピーカーはでき立ての
状態では相当内部に力が残っており、元にもどろうとする
力が残っている。ここに音を入れると内部損失の少ない
状態だから音がキーキー、ボーボーなる原因になる。
時間がたつと力は和らいでくるので、音もピーキーさが
減少する。
もうひとつの原因は含水率。木工ボンドはほとんどが水か
らできている。スピーカーボックスを組むときは木口部分
に大量の木工ボンドを塗るので、木材は膨張する。膨張
した木材はカラットした響きのある音はでない。
ぼてっとした音がでる。
この含水率についてはけっこう難しいが、どんな木材でも
ある一定の期間、たとえば日本の湿度の環境においておけば
かならず一定の低さに到達する。それを気乾含水率と言う。
ここまできて一応木材は乾燥したと考える。
ここまで乾燥するのに、生木の場合最低でも3ヶ月ぐら
いはかかるが木工ボンドを大量に含ませた合板でも、木工ボンドの影響
でかなり質量が増すから、やはり3ヶ月から半年ぐらいはかかる。
以上2つの要因によって自作したスピーカーは特に
半年ぐらいまで音が大きく変化する。特に板に大きな力
を書けた場合や、ボンドをたくさん使った場合に大きく
変化する。
始めにエージングを定義したときに、エージングは最終
的には老化して故障すると書いたが、もしかしたらスピーカー
エンクロージャーは塗装をして適切に使えば永遠に使える
のかもしれない。
アントニオ・ストラディバリが作ったバイオリン(16世紀
のものがいまだに使われている)が最高の音を出すらしい。
とすれば400年後に大山宅から発見されたスーパースワン
の音はどんな音になるのかな?
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【聞け長岡鉄男の声(第三話)】「吸音材は必要悪」
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「スピーカーキャビネットの中には必ずといっていいほど
吸音材がはいっている。(中略)使用量は年々減少の方向
に向かっている。」
ーーーオーディオA級ライセンスP169
今から20年以上前にかかれた(1983年発刊)『オーディオ
A級ライセンス』からの一節です。吸音材の使用目的と、何故
吸音材が近年のエンクロージャーに使われなくなったのかが
僅か2ページであるが詳しく書かれています。
この本が書かれたのが1983年だから
そのころの時代とつき合わせて考えてみてください。
「10年ぐらい前の密閉型システムではぎっしりと詰め込まれて
いるものが多く、この頃の吸音材の使用量を10とすると、
最近のものは5から2ぐらいにまで減っている」
ーーーオーディオA級ライセンスP169
現在でも単純に吸音材を使うのが良い、悪いかという
単純な議論がまれにネット上で繰り広げられている
のを見たことがあるが、あまり根拠のないものが多い
気がするからここでもう一度長岡先生が述べた吸音材
の役割をあげてみよう。
「吸音材は
(1)ユニットの共振のダンプ
(2)エンクロージャー自体の共振のダンプ
(3)エンクロージャー内の定在波の防止
(4)ユニット背面から放射される音波振動板やエッジを通して、あるいは
ダクトを通して外にもれてくるのを防ぐ目的がある」
ーーーオーディオA級ライセンスP169
長岡先生は吸音材の目的を4つに分けて考えている。
そしてそのほとんどは技術の向上によって吸音材を使う必要性
が薄れてきていると解説している。
特に(1)のユニットの共振のダンプは、ユニットのマグネット
の強化とアンプの制動力強化で大幅に性能が向上した。
(2)、(3)についてもエンクロージャーの板材の配置を斜めにし
たりすることでかなり防ぐことができる。
(4)も振動板、エッジの改善やダクトの形状、取り付け位置の工夫で
ある程度防げるようになったという。
だから吸音材の必要性は10年、15年前に比べて減ってきたという解説だ。
「というわけで吸音材が減ってきているわけだが、昔
のスピーカーを今のアンプで太く細いスピーカーコードで
鳴らしている人がいたら、吸音材を1/2~1/5に減らしてみること
を薦める。かなり音が変わり、ナウなサウンドに変身するはずである。」
ーーーオーディオA級ライセンスP169
これは(1)のアンプの性能が向上したことによる吸音材
の悪影響を指摘したもの。「ナウなサウンド」ですよ!!
私大山はさほどスピーカーに吸音材を使わない、いわば
生粋の長岡鉄男サウンドが好きなのであるが、近年は
様々な方の自作を聞くにつれいわば「作りこまれた音」
「能率は多少落ちるが繊細な音」に多く吸音材が使われていて
非常に魅力的なスピーカーが多いのも理解しています。
この吸音材に関してはいろいろチャレンジすることの多
いテーマであると感じています。
ちなみに現在(2008年)は意外と吸音材を使う市販メーカー
も見受けられたりする。メーカー名で言うとDALIという
リボンツィーターを作っているデンマークのメーカー。
このメーカーのパンフにはかなり大量の吸音材が使われていた。
概して、スピード感よりか「ゆったり」「まろやか」
な音作りをするのに吸音材を使う傾向がある。
オーディオA級ライセンスは↓
http://www.diyloudspeakers.jp/idaf/data/28.html
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【今月の一枚】マーラー「交響曲第5番」
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http://www.diyloudspeakers.jp/idaf/data/29.html
クラシックファンにはあまりに有名な1枚らしく
大昔に友達の家で聴いた音あまりによくて帰り道に購入したもの。
オーディオファンの方であれば既に持っている方も多い
のではないでしょうか?
私は今でも頻繁に聴きます。マーラー交響曲の第5番の
だい4楽章は映画ベェニスに死すで使われて
一躍有名になったメロディーですね。
インド人の指揮者ズービンメーターによる名曲。
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【編集後記】無料レポートの感想
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今月の16日にメルマガ読者様に先行配布いたしました
「絶対失敗しない単品スピーカーの鉄則VER1.0」
については数えきれないくらい多くの方から意見をいただきました。
皆様の意見をかいつまんで紹介いたします。
自作SPの超人ことI様より
個人的な感想として、リスナーの音圧の違いよる聴こえ方の違い
も付け加えていただけると説得力が増すのでは思います。
例ですが小音量時はドンシャリ有利、大音量は・・・・・
特に大口径は小音量時は低域の輪郭すら分からずゴミ状態で
すが、大音量では豹変すると言うように様々事が音圧の違い
で生まれてきます。ですから聴く側の音圧次第で賛否両論
が分かれる要因となっているように感じてならないですよ。
この辺を取り上げられると面白いと思いますよ。
I様より
『オーディオキャビーナという会社の「The PURE System」』
と記載されていますが、『オーディオマシーナ』の間違いじ
ゃないでしょうか。ユニットのことなのですがシンフォニー
サブウーファー部のユニットもデンマークの「ピアレス社」
製で2つあわせても10万円はしないと思います。
K様より
「読ませて頂きました
凄いの一言です 深く研究されているのがよく判りました」
T様より
大山様の深い研究には本当に頭が下がります。
特に面白かったのは、「評論家の意見は参考にしない」
「聴きつかれするスピーカーの」の項目です。評論家については
大山様と全く同じ意見を持っており、長岡先生がいなくなってから
は雑誌はほとんど買わなくなりました。大山様のメルマガ
だけが現在は唯一楽しみです。どうかがんばって続けてください。
M様より
今回配布していただいた、大山様の「絶対失敗しない・・」に
「オーディオ評論家の意見は参考にしない」の記述は、まったく
その通りですが、本当にこれでいいのでしょうか?
確かに長岡氏も酷評はしなかったと思いますが、
「よく評価した機器」と「すごく良く評価した機器」は、
明確だったように思います。また、評価は音だけに止まら
ず、構造や素材などにも及び、それが音への裏付けとなっており、
読んでいて大変勉強になったと記憶しています。
N様より
今回の「絶対失敗しない単品スピーカー購入の鉄則Version 1.0」
楽しく読ませていただきました。大山様の思い入れと独断満載の
(失礼、でも褒め言葉です)とても役に立つレポートです。
K様より
「スピーカーは大きく分けて2種類しかない」の項目は私が長年
何故タンノイのスピーカーにしか興味をもてないのかが
はっきり分かりました。そういうことだったのか!!と思わず
唸ってしまいました。大山先生のこのレポートをもっと早く
読んでいれば無駄な出費(昨年だけでうん十万)はせずに
済んだかもしれません。
素晴しいレポート本当にありがとうございます。
他紹介しきれないほど多くの方からご感想をいただき
ました。どうもありがとうございます。
まだまだ完全ではなくβバージョンにしようとも思いました
がこれからもバージョンアップを繰り返そうという意味を
こめてVer1.0といたしました。
自分で読み返して書き換えなければならないと思ったことが1つ。
あまりに「自作」と言う言葉が出すぎていること。
これは「市販スピーカー」購入の手引きですといいながら
自作スピーカーが優れていることが出すぎ(笑)
これでは市販と自作が対立軸になってしまいますわな(そ
んな気は全然ないんですが。)
もう少し次のバージョンでは自作のトーンを抑えた
レポに書き換えようかなとも思ってます。
まだ読んでない方はサイドメニュー上からダウンロードしてみてください。
皆様から頂戴しました意見は以後のバージョンアップの
参考にさせていただこうと思いますので、ドシドシご意見
お寄せください!!
拙い文章最後まだ読んでいただきどうもありがとうございます。
皆様のオーディオライフがより豊かなものになりますように
大山美樹音